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まだどこにもない、理想の製品を私たちと一緒に MAKE with TOYOShutter

INTERVIEW with KAWAMI TAKUYA at2023.1.31

東洋シヤッター株式会社 生産製品本部 技術部 副部長 兼 第2技術課長

諸留 充

(略歴)大阪府出身。1994年4月に東洋シヤッター株式会社入社。技術部開発課に配属後、2011年2月から2014年3月まで業務企画部。さらに、2014年4月より技術部(内2021年4月から2023年3月は商品企画担当)に所属し、今に至る。その間にTSレバータイトをはじめ、TSウォータータイトやTSベンチタイト、TS耐風セーブ、タイカルックαなど画期的な商品開発を担当(実担当、管理担当、企画担当)。使用者がまだ気づいていないことまで含め、使用される方が求めるものをそのまま商品として提供できればと思い開発にあたっている。大切にしているのは、どうしても対応困難と思われる場合でも「じつは別の方法があるのでは?」「じつは解決策があるのでは?」「じつはもっと良い方法があるのでは?」と、切り口や見方を変えて考えること。

軽くて、使いやすくて、窓の大きな防音ドア。
音楽専攻担当の川見様が出されたご要望に応えられたのは、
独自のデータ蓄積とノウハウがあったからです。

ー川見様のご要望を聞いたときの率直な感想をお聞かせください。
まったくムリだとは思わなかったのですが、それよりもまず思ったのは、ついにこういう要望が来たんだということです。
と言うのも、レバーハンドルの防音ドアTSレバータイトを商品化して10年以上が経ち、その間、バリエーションも充実させてきました。その中で、どういうものが好まれて使われてるのか傾向を見たことがあり、ここ数年は窓が付いたものが増えていました。それまでの防音ドアは、「音を遮ってくれたらそれでいい」という流れでしたが、コンプライアンスの関係もあり、もう閉鎖的なのはイヤなのかなと感じていました。ただ、増えたとはいえ、そんなに大きな窓ではなく、遮音性を重視しているのは間違いありませんでした。
遮音性が第一で、ちょっと中が見えたらいいという商品は問題なくできていました。そのうえで、いつかはもっと進んだ要望が来るかなとは思っていましたけれど、実際お話いただいたときに私たちにはご要望を満たす商品がまだありませんでした。
ー複数社が、レバーハンドルと大きな窓では防音ドアはムリだと答えたところ、東洋シヤッターは違ったとうかがいましたが。
そのときの答は『できるかも』だったと思います。できると、しなかったはずです。
TSレバータイトに窓付きのバリエーションを増やしているとき、じつはいろいろと試していたのです。窓のサイズやガラスが変わったらどうなるのか。限界値を知りたいわけです。この性能が、こうすればどうなるのか、こちらに振ったらどうなるのかなど、さまざまことを試していて、そのときのデータが社内にノウハウとして残っていました。そのため、データを組み合わせながらの検討が可能でした。
まったくゼロの状態ではなく、比較的予測をつけやすかったというのはあります。それでも試験などはしていませんので、『できます』とは言い切れません。可能性はありますとお答えしたと思います。
TSレバータイトを出した当時は正直、そこまで大きな窓は考えておらず、まず窓付きのラインナップ自体が非常に少なかったので、そこをめざしてやっていました。防音重視で「中が見えたらいいよ」ぐらいだったので、窓はメインではありませんでした。だから、今回のような大きな窓まで一気に行く認識はないし、商品を出そうということも考えていませんでした。
今回望まれて、がんばってつくってみて思ったのは、框ドアに窓がバーンと付いていて、さらに遮音性能もあるのは確かにいいなということです。思い返せば、望まれてつくった商品には、他にもいいなと思えるものが多いと思います。
ーTSレバータイト 框窓付フラットタイプを開発できた理由はどこにありましたか。
先ほども少し触れましたが窓の小さい防音ドアは完成していて、遮音等級T-4までは一通り揃えていました。
そのときに、もう少し窓が狭くなったら遮音性がどうなるのか。逆に広くなったらどうなるのか。そういう要望もあるんじゃないかということで、試していました。そのノウハウがあったので、ある程度の予想はできるのではないかと思っていました。
しかし、音の性能はひとつの材料だと予想しやすいのですが、複合的な要素、たとえばグラスウール(吸音材)を入れたり、ガラスを入れたり、サイズが変わると単純な足し算にはならず、思い通りにいかないことも多々あります。こうなるんじゃないかと予想しても、実際やってみないとわからない。まったく違う結果が出る怖さがありました。それだけデータが揃っているなら、「できます」と前に進めばいいじゃないかと営業は思っていたかもしれませんが。
実際に試験を受けるまで、「これでいけます」と言わなかったのはそういう不安の部分で、川見様も「多分何とかなると思います」ぐらいしか返事をもらえなくて、もどかしく感じられていたのではないでしょうか。
もともと、(今回商品のベースである)TSレバータイトは、ドアが薄くて、防音用の追加操作も不要。さらに下もフラットで、軽くて使いやすくて、遮音性も担保されているのが特長です。そこを崩したくないという明確な思いがありました。ドアを分厚くして、ギュッと締め込んで、窓だけ大きくすれば簡単かもしれませんが、気に入っていただいた部分から外れてしまいます。元々のコンセプトを崩さずに、要望された性能を出すのはやはり、ちょっと苦労しました。今までにないものですからちょっと苦労しました。
ただ、前に進まないといけないのは間違いないことです。川見様もTSレバータイトの良さをそのまま、窓を大きくすることを望まれていたはずなので、そこは崩したくないと思って、取り組んでいました。

コンセプトから外れなければ、
すべて任せていただけたおかげで
短期間での開発ができました。

ー開発において苦労したことはありましたか。
たとえば同じ遮音性能のガラスとドアを組み合わせても、同じ性能が出ないことはよくあります。
遮音等級T-3の窓と、遮音等級T-3のドアを足せば、遮音等級T-3の窓付ドアができるかというと、必ずしもそうはなりません。逆に遮音性が下がったりすることがあって、複合的につくられたものがどういう挙動を示すのか、わかりにくいところがあります。ガラスやドア、気密部分などそれぞれに弱点があり、それらを組み合わせたときに、弱点と弱点が重ならないようにしていくのがノウハウです。さらに、お互いの良いところを取り合える構造にしていくのがポイントなのですが、それは過去の試験でいろいろなノウハウがありました。それが今回、うまくいったというわけです。
ただ不安もありましたので、試験を受けるときは1台だけではなく、いくつも用意して持っていきました。
ー「この短期間でここまでできるのか」と川見様も驚いておられましたが、実際、厳しい開発でしたか。
実際のところ、時間的には厳しい方だったと思います。
一般的な開発であれば、追求したいところもあるのでトライ&エラーを何度も積み重ねます。一方、今回はトライ&エラーを繰り返せる時間があまりなくて、もうトライ、トライで行こうといった雰囲気でした。じつは、それもあって、ちょっと大丈夫かなというのはありました。
ただ、川見様のご要望も明確で、TSレバータイトに大きな窓を付けてほしいというところを守ってもらえるのであれば、私たちの思う通りにしてもらってかまいませんといった非常に協力的なスタンスでいらっしゃったので、進めやすかったというのは大いにあります。それでもやはり、日程的にはギリギリだったと思います。
通常の開発でも期限は切りますが、お客様のオーダーでなければ期限を少し延ばすこともあります。これまでお話しした通り、すべてがうまくいくわけではなく、実験すると改良点が見つかったとか、これで大丈夫だと思っても性能が少し足りないといった不測の事態が生じたりします。そうなれば再度、トライ&エラーで見直すので、どうしても立てた目標を毎回厳守するのは難しくなります。
今回は社内でなくて、川見様が希望される決まった期限の中で仕上げなければならないというプレッシャーは確かにありました。
ー短期間で開発ができた要因は。
川見様の目的や求められていたものが、とてもわかりやすかったのが大きいと思います。
できることは簡単に返事ができましたが、こうしないとおそらく難しいということもありました。それを正直にお伝えすると、「コンセプトに合ってるからいいですよ」とリターンを返していただけたので、間接的ではありましたが、お互いがお互いを理解しながら協調し、協力することができたのではないかと思います。不可能に思えるような要望であれば、直接お話して解決することになっていたでしょうが今回は、おかげさまで川見様にもご納得いただける範囲で進行できたと思います。とにかく、ご要望がはっきりしていらっしゃったのが一番です。それ以外は私たちに任せていただけたのが、ありがたかったです。
また、速いと感じられた要因には、川見様から何か質問をいただいときに、1?2週間で回答をさせていただいたことがあるのかもしれません。レスポンス良く、トライ、トライで進め、最終試験を受け、きちんと性能が出ましたとの報告ができました。

私たちだけではなく、
一緒につくることでひろがる可能性があるはず。

ー東洋シヤッターが取り組み始めている、お客様と一緒につくる「MAKEwith」について技術の立場から、どう思われますか。
実際、つくる人間からすると、良い面と悪い面があります。
良い面は、「こういう商品が欲しかった」、「こういう性能にしたかった」という声がうかがえることです。そういった機会は、ありそうで案外ないものです。仕事の中でお客様がご要望を素直におっしゃるかというと、押し付けになると思われているのか、なかなか聞こえてはきません。私たちの方がドアなどについてはプロなので、「こんなものもないのか」とはさすがに言いづらいと思います。ですから、本当はどういうものが欲しかったのか、どこまで性能を上げて欲しかったのかという声をうかがえるのはとても貴重です。
お声をうかがい、私たちの商品をどんどん良くしていける一方で、実際につくるとなると、「このご要望はとても実現できそうにない」とか「お断りするのは申し訳ない」など、いろいろなことを考えてしまうのが悪い面でしょうか。技術としては、実現したいというのがまず先に立つもので、それが叶いそうにないときのストレスは大きいものです。遊びでやるのなら6?7割の実現性があればやってみようとなるのですが、仕事で技術の立場からすると、9割5分以上の確率がないと「できます」とは言いづらいものです。
また、可能性があってスタートしても、あとは私たちだけでつくるのではなく、意見を出し合いながら、お互いに協力、協調しながら進めることも大切に思います。そうすれば今回、川見様のご要望から生まれたTSレバータイト 框窓付フラットタイプのように、難しそうに思えるものも実現できるのではないでしょうか。一緒につくるというスタンスは本当に大事だと思います。
ドアだけをつくっているとわからなかったのですが、川見様の建物のコンセプトや実際の写真などを拝見させていただくと、おっしゃられていた開放感や一体感がリアルに感じられ、「なるほど、これはいいな」と心から思えました。それは、一緒につくらせていただいたからこその感動ですし、私たちにとって忘れられない「MAKE with」になりました。
ーなるほど。本日は長い時間、どうもありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。

東洋シヤッターのこれからのモノづくり
“MAKE with”にご期待ください。

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